本州屈指の秘境駅「小和田駅」で見つけた白骨の思い出
2017年7月、秘境駅好きには有名な小和田駅に行ってきました。
学生時代から貧乏旅行が好きだった僕は、青春18きっぷのシーズンになると必ずどこかに遠出していました。
海外旅行と違って、普段使いしている路線から馴染みのない景色にじわ〜っと移行していく「現実の延長線上にある非現実」みたいな感覚が大好きでした。
(特に夏がベストです。夏に田舎に行くと無条件でノスタルジーを覚えるというか、タイムスリップしたような気分になります。)
青春18きっぷにハマって8年、憧れていたキングオブ秘境、小和田駅に満を持して向かいました。
三鷹から小和田に向かう
元々僕は関西出身で、小和田駅に行きたくても物理的にアクセスが難しい場所に住んでいました。
しかし、就職を機に上京。当時は三鷹で暮らしていました。
「三鷹からならあっちゅうまやんけ!」ということで、今回の電車旅が決行された次第です。
早朝に三鷹駅に到着。西に向かう中央線に乗り込みます。
この時刻表に沿って出発。青春18きっぷの旅なのに途中下車して休憩するタイミングがなくてげんなりした記憶があります。
この乗り換え案内、三鷹〜八王子間はいいとして、八王子から小和田にかけては94駅。尻が腐ります。
小和田駅がある飯田線は長野県と愛知県の豊橋を結ぶ路線で、駅数がやたら多いです。
走っているのはほぼ終始山間部で、集落ごとに駅を作っているのが理由かと思われます。
関西でも「集落ごとに駅がある秘境線」らしきものはあったのですが、飯田線は格が違います。だって100駅近くあるんだもの。尻が腐ります。(2回目)
山梨県の日野春駅で長めの停車時間があったので一度休憩。これが最後の休憩でした。
この後飯田線に乗り換えるのですが、僕が乗った車両はやけに新しく、シートもフカフカのボックス席でかなり快適でした。
(中央本線って登山目的の乗客が多いからみんな荷物おっきいんですよね。地方路線とは思えないくらい狭かった気がする)
そうこう(7時間半乗車)しているうちに小和田駅の隣、中井侍駅に到着。
中井侍駅も一級の秘境駅として名を馳せており、いっそ中井侍駅から小和田駅まで歩いてやろうかと思いましたが
無理でした。
小和田駅手前の手前をご覧ください。道が天竜川で分断されています。
橋はありません。あろうことかグーグルマップはこの長大な川を泳いで渡れと宣うのです。もし従っていたら川を目の前に立ち尽くすところでした。
大人しくもう一駅電車に揺られます。
小和田駅に到着
小和田駅が近づいてきました。
到着です。この時下車したのは僕だけでした。
えげつない渓谷にある割には小綺麗な駅舎です。ファンの多さが伺えます。
駅舎内はレトロな雰囲気。もちろん今は無人駅です。
駅周辺案内図。
なるほど、わからん。
小和田駅の隣に小和田駅があるし、天竜川が池になってるし、地図というにはアナーキーすぎます。
ちなみに小和田は愛知県、長野県、静岡県の三県の境界上にあります。(厳密な境界は川の上)
三県の県境は初めて見ました。普段の生活では出会うことのないスポットです。
駅舎を出ると(少し読みにくいものの)「愛」と書かれたベンチが。
昔々、皇后雅子さまの旧姓が「小和田(おわだ)」だったということで、この駅で幸せを誓い合ったカップルが多数いたそうです。
今は使われている形跡はありませんでした。突然旦那にこんなところ連れてこられたら爆速破局待った無しです。
そんなことを考えながらベンチを見つめていると、頭上から不穏な音が聞こえてきました。
マーブル模様の美味しそうなハチの巣がありました。
これがアイスクリームならよかったのですが、秘境駅の屋根にぶら下がっているアイスは見たことがありません。
避難がてら駅前を散策することにします。
駅から徒歩5分で遭難気分
小和田駅の時刻表を確認します。
出典:ekiten
僕が到着したのが13:42。次の電車は16:01。
バスやタクシーはない。どう転んでも2時間以上は小和田駅に滞在しないといけません。
この時7月。周辺に自販機や空調の効いた施設はありません。うだるような暑さの中、残り200ml程度しか残っていないであろうペットボトルの水で渇きを凌ぎます。
眼下には天竜川が広がっていますが、流石に飲めません。足を滑らせでもしたら海へと還ることになります。
対岸には鹿がいました。
奈良公園の連中と違って野生を失ってなさそうです。
ひたすらこんな道を歩いていきます。
軽率に小和田の門を叩いたことに後悔の念が湧きますが、時すでに遅し。
道端には小和田名物、ミゼットの廃車。
大昔の工事で使われて以来放置されているそうです。
途中「塩沢集落」という集落に向かう看板を発見。
1時間と書いているものの、1時間で着く気がしないし、そもそも集落が現存してるのかも疑わしいので今回は回避。
先に進みます。(思い出しただけで喉が乾く…)
白骨と羽音の恐怖
歩を進めていると、恐ろしいものを発見しました。
白骨です。形状から背骨と予想されます。
しかもかなりでかい。人間と同じかそれ以上のサイズ感です。
なんで背骨の一部分だけあるの?とか道沿いで白骨化すんなよ、とか色んな疑問が湧いてきましたが、確かなことは「付近に大型の哺乳類がいる」ということです。
しかも白骨の近くにはこんな洞穴が。
クマやん。絶対クマおるやん。
もしツキノワグマの機嫌でも損ねようものなら、僕が白骨第二号になる可能性もないとは言い切れません。
孤独感も相まって言いようのない恐怖に襲われた僕は歩みを早めました。
すると…
一軒のお宅を発見。
おっしゃ!電車が来るまであがらせてもらおう!あわよくば麦茶の一杯でもいただこう!
…と思ったものの、近づいてみても人の気配はせず。廃屋でした。そりゃそうだ。
がっかりしつつその場から離れようとしたその時、廃屋の壁から物音が聞こえました。
ブ〜ン(×50くらい)というあまりにも不穏な音。
壁の向こうでは無数のハチが飛び交っているようです。
一目散に立ち去る僕。クマよりはるかに怖い。
何かの手違いで電車が1時間くらい早く来ないかと願いつつ、とにかくその場から遠ざかりました。
政令指定都市・小和田との別れ
廃屋からさらに奥まったところに進むと、一本の橋がありました。
人の息がかかった建造物に感動を覚えます。
橋の近くには迂回先を示す表示が出ていました。
「浜松市」の文字。
ここ政令指定都市なんだ…政令指定都市のイメージが覆りました。
そんな感慨を覚えた頃に電車の時間が近づいてきたので駅に帰還。どこにいたのか、工事現場帰りの方が数人いました。
豊橋の花火祭りを見て就寝
名物のカレーうどんを食べていると、表から轟音が聞こえてきました。
この日は豊橋の花火大会でした。しかもかなり大規模。
全く下調べしていなかったので、ラッキーな鉢合わせでした。
1時間ほど楽しんだ後、年季の入ったホテルに宿泊。
隣部屋の客がドライヤーを使ってなぜか僕の部屋のブレーカーが落ちるというオチがついたところで、過酷で思い出深い1日が終わりました。
秘境に行くのはおっかないけど楽しいです。
色々落ち着いたら秘境に行こうかな。まだ復旧していない只見線あたりに遊びに行きたいです。
それでは今日はこの辺で。